【不動産FPが解説】住宅ローンと賃貸の併用は可能?リスクと成功の出口戦略を徹底解剖

不動産購入を検討する際、多くの会社員や公務員の方が「マイホームとして住宅ローンを組むべきか、あるいは将来的に賃貸に出して収益を得るべきか」という悩みに直面します。また、既に投資用ワンルームマンションを所有している方が、結婚や家族構成の変化を機に「住宅ローンを組んで自宅を買えるのか」という不安を抱くケースも少なくありません。
住宅ローンは低金利で長期借入ができる非常に有利な仕組みですが、その本来の目的は「自己居住」に限定されています。もしルールを誤解したまま運用してしまうと、銀行からの全額一括返済を求められるといった致命的なリスクを背負うことになりかねません。本記事では、不動産専門のFPとしての視点から、住宅ローンと賃貸経営を賢く両立させ、将来的な資産形成を最大化するためのロードマップを詳しく解説します。
この記事を読むと分かること
- 住宅ローン返済中の物件を賃貸に出す際の「銀行との交渉術」と「違法性」の境界線
- 投資用ローン(賃貸用)と住宅ローンの審査基準の違いと併用するための条件
- 不動産投資の赤字が住宅ローン審査に与える具体的な影響と属性改善のポイント
- 賃貸併用住宅という選択肢における収支シミュレーションと税制優遇の活用法
- 将来の売却(出口戦略)を見据えた、住宅ローン利用物件の賢い選び方
住宅ローンと賃貸を巡る現状と後悔しないための基礎知識

不動産市場において、住宅ローンと賃貸の関係性は非常に密接でありながら、多くの誤解が蔓延しています。特に「低金利の住宅ローンで家を買い、そのまま貸し出せば儲かるのではないか」という安易な考えは、プロの視点から見ると極めて危険な橋を渡っていると言わざるを得ません。まずは、現在の市場環境と基本的なルールを整理しましょう。
住宅ローンと不動産投資ローンの決定的な違い
最大の違いは「融資の目的」と「金利」です。住宅ローンは、国民の居住の安定を図るために政策的に低金利(0.3%〜1.5%程度)で提供されています。一方、賃貸経営を目的とした不動産投資ローンは、事業資金としての性質を持つため、金利は2%〜4%程度と高めに設定されるのが一般的です。銀行は「自分で住むからこそ、返済が滞るリスクが低い」と判断して低金利を適用しているため、無断で賃貸に転用することは契約違反(金利の遡及適用や一括返済の対象)となります。
なぜ今、住宅ローンと賃貸の併用が注目されているのか
背景には、日本の経済状況と「資産形成の多層化」があります。終身雇用制度が揺らぎ、年金不安が叫ばれる中、会社員として給与を得ながら「不動産という第二の所得源」を持とうとする動きが加速しています。また、都市部を中心とした不動産価格の上昇により、住宅ローンで購入した物件が数年後に「買った時より高く売れる」あるいは「高い賃料で貸せる」という含み益を生み出しやすい環境にあることも、このトピックへの関心を高めています。
20代・30代の会社員が陥りやすい「賃貸転用」の罠
独身時代にコンパクトマンションを住宅ローンで購入し、結婚後にその部屋を賃貸に出して自分たちは広い家を借りる、あるいは新たに購入するというパターンです。この際、銀行に内緒で賃貸に出す「隠れ賃貸」が後を絶ちませんが、これは非常にリスクが高い行為です。郵便物の転送設定や、定期的な居住確認のDMが届かないことで発覚し、最悪の場合、社会的信用を失い、次の住宅ローンが組めなくなる可能性もあります。
住宅ローン返済中の物件を賃貸に出す際の法的な注意点と銀行への相談

住宅ローン返済中の物件を賃貸に出すことは、原則として認められていません。しかし、人生には予期せぬ変化がつきものです。転勤、親の介護、あるいは結婚といった「やむを得ない事情」がある場合、銀行との交渉次第では一定期間の賃貸転用が認められるケースがあります。ここでは、住宅ローンと賃貸の整合性を保つための正攻法について解説します。
「やむを得ない事情」として認められるケースと手続き
銀行が住宅ローンの継続を認めつつ、賃貸に出すことを許可する主な理由は「転勤」です。辞令による一時的な転居であれば、金融機関に所定の届出を出すことで、住宅ローン契約のまま賃貸運用が可能です。ただし、住宅ローン控除(減税)は「本人が居住していること」が要件であるため、賃貸に出している期間は適用外となります。再び居住を開始すれば再適用できる場合があるため、詳細は国税庁のウェブサイトなどで最新の税制を確認することが不可欠です。
銀行に無断で賃貸運用した際のリスクと罰則
銀行に無断で住民票を移し、第三者に賃貸したことが発覚した場合、銀行は「契約違反」として期限の利益の喪失を主張できます。これは、残債を全額一括で返済しなさいという通告です。もし一括返済ができなければ、物件は競売にかけられることになります。また、悪質なケースでは「詐欺罪」に問われるリスクもゼロではありません。特に近年はマイナス金利の解除など金融情勢が変化しており、銀行側のチェックも厳しくなっているのが実情です。
住宅ローンから不動産投資ローンへの借り換え検討
転勤などの一時的な理由ではなく、本格的に「投資」としてその物件を運用したい場合は、住宅ローンから不動産投資ローン(アパートローン)への切り替えを行うのが正しい手順です。金利は上がりますが、これにより堂々と賃貸経営が可能になります。ただし、投資用ローンは審査基準が「物件の収益性」と「個人の与信」の両面で判断されるため、住宅ローンよりもハードルが高い点に注意が必要です。
賃貸管理会社との契約時に確認すべきポイント
住宅ローン物件を賃貸に出す際、管理会社選びも重要です。住宅ローン物件であることを隠して客付けを依頼しようとするオーナーもいますが、優良な管理会社はコンプライアンスを重視するため、銀行の承諾があるかどうかを必ず確認します。管理会社は将来の売却時(出口戦略)のパートナーにもなるため、FPの視点からは「収支の透明性」が高い会社を選ぶことを推奨します。
賃貸経営者が住宅ローンの審査を通すための属性改善と借入可能額の計算

既に投資用不動産(賃貸用マンションなど)を所有している方が、新たに住宅ローンを組んで自宅を購入する場合、審査の難易度は一段と上がります。なぜなら、投資用ローンの借入は「負債」としてカウントされるからです。ここでは、賃貸オーナーが住宅ローン審査をクリアするための戦略的なアプローチを解説します。
返済比率(DTI)の計算における投資ローンの扱い
住宅ローンの審査で最も重視されるのが「返済比率(返済負担率)」です。これは、年収に占める年間返済額の割合です。一般的に、年収の30%〜35%が上限とされます。ここで問題になるのが、投資用ローンの返済分もこの「返済額」に含まれてしまう点です。 例えば、年収600万円の人が投資用ローンの返済に年間150万円払っている場合、既に返済比率は25%に達しており、住宅ローンとして借りられる枠は残りわずかとなります。銀行によっては、賃貸収入を「収入」として合算してくれますが、その評価額は満額ではなく70%〜90%程度に見積もられるのが一般的です。
賃貸物件の「赤字」が住宅ローン審査に与える致命的な影響
多くの不動産会社が「節税になります」と言って赤字のワンルームマンションを販売していますが、これは住宅ローン審査において非常に不利に働きます。確定申告書上の「不動産所得の損失」は、銀行から見れば「返済能力を低下させる要因」でしかありません。赤字額が大きいと、本来借りられるはずだった住宅ローンの金額が大幅に削られる、あるいは融資自体を断られる原因となります。
| 状況 | 投資ローン返済額 | 賃貸収入(評価後) | 住宅ローン推定借入枠 |
|---|---|---|---|
| 投資なし | 0円 | 0円 | 約5,500万円 |
| 投資物件(黒字) | 120万円/年 | 150万円/年 | 約4,500万円 |
| 投資物件(赤字) | 150万円/年 | 100万円/年 | 約2,500万円 |
審査を有利に進めるための「属性改善」テクニック
住宅ローンを申し込む前に、できる限りの属性改善を行いましょう。具体的には、他のローン(車のローン、カードローン、リボ払い)の完済、投資用物件の収支の見直し(賃料アップや管理費の見直し)、そして可能であれば「繰り上げ返済」による投資用ローンの残債圧縮です。また、金融機関によって「投資用ローンの実績をプラスに評価する銀行」と「一律にマイナスとみなす銀行」があります。この見極めには、不動産専門のFPや提携ローンに強い不動産会社の知見が欠かせません。
住宅ローン控除と賃貸併用住宅のメリット・デメリットを徹底シミュレーション

「住宅ローンを使いながら、一部を賃貸に出して収益を得る」というハイブリッドな選択肢が、賃貸併用住宅です。自宅としての快適性を維持しつつ、家賃収入でローン返済を軽減できる魅力的な仕組みですが、そこには特有のルールとリスクが存在します。住宅ローンと賃貸のバランスをどう取るべきか、深掘りしていきます。
賃貸併用住宅で住宅ローンを組むための条件
賃貸併用住宅において、低金利の住宅ローンを適用するためには、通常「自宅部分の床面積が建物全体の50%以上」である必要があります。この条件を満たせば、建物全体の融資を住宅ローンとして組むことができ、非常に有利な資金調達が可能になります。もし賃貸部分が50%を超えてしまうと、事業用ローンとしての扱いになり、金利負担が増大するため、設計段階での注意が必要です。
金融機関・商品で可否が大きく分かれる。フラット35は原則として賃貸併用に不向き(少なくとも投資部分の賃貸は不可)
住宅ローン控除の適用範囲と家賃収入の税務
住宅ローン控除は、あくまで「自分が住む部分」に対応する借入残高に対してのみ適用されます。例えば、建物の半分が賃貸の場合、ローン残高の半分だけが控除対象となります。一方で、賃貸部分の建築費や固定資産税、ローンの利息分などは「経費」として計上可能です。この複雑な損益計算を正しく行うことで、実質的な住居費を限りなくゼロに近づけることも不可能ではありません。
空室リスクと修繕費用の長期的な影響
賃貸併用住宅の最大の懸念は、空室リスクです。住宅ローン返済を家賃収入ありきで組んでしまうと、退去が発生した途端に家計が圧迫されます。また、一般の住宅よりも設備(キッチンやユニットバスなど)が多くなるため、10〜15年周期で訪れる大規模修繕のコストも割高になります。将来的にその物件を「一括で売却」するのか、あるいは「賃貸専用として持ち続ける」のかという出口戦略を、新築時から描いておく必要があります。
プライバシーと管理の手間という「隠れたコスト」
他人が同じ建物内に住むことによるストレスも無視できません。騒音トラブルや、ゴミ出しのルール違反など、オーナー自らが管理を行う場合は精神的な負担が生じます。管理会社に委託する場合も、管理委託手数料(家賃の5%程度)が発生するため、住宅ローンと賃貸の収支計算にこれらを正確に組み込む必要があります。不動産専門のFPとしては、単なる収支だけでなく「ライフスタイルとの適合性」を重視して判断することをお勧めしています。
住宅ローンが残る家から賃貸へ住み替える際の売却か保有かの判断基準

ライフステージの変化により、今住んでいる住宅ローン付きの家をどうすべきか判断を迫られる時期が来ます。「売却してローンを完済する」か、「賃貸に出して資産として持ち続ける」か。この判断は、その後の人生のキャッシュフローを大きく左右します。住宅ローンと賃貸の損益分岐点を見極めるための基準を整理しましょう。
売却による「住宅ローンの完済」が優先されるべきケース
まず確認すべきは「オーバーローン」の状態かどうかです。物件の査定額よりも住宅ローンの残高が多い場合、手出しの資金(自己資金)で差額を埋めなければ売却できません。しかし、もし売却益が出る(アンダーローン)状態で、かつ将来的に「新しい住宅ローンを組んでマイホームを買いたい」と考えているなら、現在の物件は売却してローンを消しておくのが定石です。なぜなら、前述の通り既存のローンは次の審査の大きな足かせになるからです。
賃貸経営として「保有」を継続すべき物件の特徴
一方で、以下のような条件を満たす場合は、賃貸として保有し続ける価値があります。
- 高い利回りが見込める:住宅ローンの返済額、管理費、固定資産税を差し引いても十分なキャッシュフローが残る。
- 資産価値の下落リスクが低い:駅近や再開発エリアなど、将来的な売却価格の維持が期待できる。
- 法人化や節税のスキームに組み込める:年収が高い層であれば、不動産を持つことによる税制上のメリット(減価償却費の活用など)が享受できる。
ただし、投資用不動産の売却で損失が出たとしても、その譲渡損失は給与所得との損益通算や繰越控除ができないという点は、税務上の大きな注意点です。住宅用不動産のような「居住用財産の買換え特例」は投資用には適用されません。
将来の売却(出口)を見据えたリーサビリティの重要性
賃貸に出すということは、将来「実需(自分が住む人)」ではなく「投資家」に売ることになる可能性があります。投資家に売る場合、価格は「収益還元法」で決まるため、賃料をいかに維持できているかが重要です。住宅ローンと賃貸の並走期間が長ければ長いほど、建物の老朽化は進みます。10年後、20年後に誰がその物件を、いくらで買ってくれるのか。この逆算思考こそが、不動産投資で失敗しないための鉄則です。
不動産専門のFPが教える「住宅ローン 賃貸」併用の最終判断
結局のところ、住宅ローンと賃貸をどう扱うのが正解かは、個人のライフプランと財務状況に依存します。現在の借入状況、将来の家族構成、リタイア時期、そして保有している物件の市場価値。これらをパズルのように組み合わせ、最適な解を導き出す必要があります。安易な「賃貸転用」や、無理な「ダブルローン」は、時に家族の幸せを脅かすリスクとなります。住宅ローンと賃貸の両立に迷った際は、目先の収益だけでなく、30年単位の長期的なシミュレーションを行うことが、本当の意味での資産防衛につながります。
まとめ:住宅ローンと賃貸のバランスを最適化し将来の資産形成を成功させる方法

住宅ローンと賃貸の併用は、正しく理解し活用すれば強力な資産形成の武器になりますが、一歩間違えれば銀行からの全額返済請求や、将来の住宅ローンが組めなくなるといった大きな代償を払うことになります。特に20代から40代の働き盛りの世代にとって、不動産は最大の資産であると同時に、最大の負債にもなり得ます。
本記事で解説したように、住宅ローン返済中の賃貸転用には厳格なルールがあり、投資用不動産を所有した状態での新たな住宅ローン審査には高度な戦略が必要です。また、賃貸併用住宅や住み替え時の判断においても、税制や市場動向を熟知した上での論理的な選択が求められます。不動産投資の赤字を「節税」という言葉で片付けるのではなく、将来の出口戦略を見据えた健全な財務体質を構築することが、不動産FPとしての共通の願いです。
「今の自分の状況で、理想のマイホームは買えるのか?」「投資用マンションを所有し続けても大丈夫なのか?」といった不安や悩みは、一人で抱え込まずにプロに相談することをお勧めします。個別の状況に合わせたキャッシュフロー表の作成や、金融機関の選定、物件の収益性評価など、実務的なサポートを受けることで、不必要なリスクを回避し、確実な一歩を踏み出すことができます。あなたの資産を「負債」ではなく「真の資産」に変えるために、まずは不動産専門のFPによる無料個別相談を活用してみてはいかがでしょうか。
