【不動産FPが解説】投資用マンションが売れない時にどうする?売却に向けた具体的な対策と損切り判断

「売りに出しているのに、半年経っても内見すら入らない」
「不動産会社からは値下げの提案ばかりで、このままではローン残債すら返せない」
「毎月の収支が赤字で限界。一刻も早く手放したいが、買い手がつかない」
現在、このような悩みを抱えてこの記事にたどり着いたのではないでしょうか。投資用ワンルームマンションの販売現場では、「買いたい人」よりも「売りたい人」の方が圧倒的に多いケースが散見されます。特に、新築で購入した物件を数年後に売却しようとした際、想像以上の価格下落と流動性の低さに愕然とするオーナー様は後を絶ちません。
売れない期間が長引けば長引くほど、固定資産税や管理費・修繕積立金の負担は重くのしかかり、築年数の経過とともに資産価値はさらに目減りしていきます。まさに「時間との戦い」です。
私は不動産専門のファイナンシャルプランナー(FP)として、これまで数多くの投資用マンションに関する相談を受けてきました。その中で断言できるのは、「売れない物件には必ず明確な理由がある」ということです。そして、その理由さえ特定できれば、打つべき対策(どうするべきか)は見えてきます。
この記事では、感情論や精神論ではなく、数字とロジックに基づいた「売れない投資用マンションへの処方箋」を提示します。損切りをためらっている間に傷口を広げてしまわないよう、今あなたが取るべき行動を具体的に解説していきます。
この記事を読むと分かること
- 投資用マンションが市場で「売れない」本当の原因とメカニズム
- 売却期間が長期化することによる具体的な金銭的リスクとデッドクロスの恐怖
- 一般媒介、買取、任意売却など、状況に応じた最適な売却手法の選び方
- 「持ち続ける損失」と「売却する損失」のシミュレーション比較手法
- 売却損が出た場合の税務上の注意点(損益通算の不可について)
なぜあなたの投資用マンションは売れないのか?どうするべきか原因を特定する

まず最初に行うべきは、現状分析です。「景気が悪いから」「運が悪いから」といった曖昧な理由で片付けてはいけません。投資用マンションが売れない原因は、大きく分けて「価格」「集客(不動産会社)」「物件固有の事情」の3つに分類されます。これらを冷静に見極めることが、解決への第一歩となります。
価格設定が市場相場と乖離しているケース
最も単純かつ多い原因が、売り出し価格が相場よりも高すぎるという点です。特に、新築時にデベロッパーの利益や広告宣伝費が上乗せされた価格(いわゆる「新築プレミアム」)で購入している場合、オーナー様の「残債を消せる金額で売りたい」という希望額と、市場の実勢価格(中古相場)には大きな乖離が生じます。
投資用マンションの購入検討者は、主に投資家です。彼らは居住用物件を探す人のように「内装が綺麗」「景色が良い」といった感情的な要素よりも、「利回り」と「キャッシュフロー」を最優先で判断します。
例えば、近隣の類似物件が表面利回り5.0%で取引されているエリアで、あなたの物件が希望価格ベースで利回り4.0%にしかならない場合、投資家は見向きもしません。まずは、レインズ(REINS)やポータルサイトの成約事例をもとに、客観的な相場価格を把握する必要があります。
| 確認項目 | チェックポイント |
|---|---|
| ローン残債ベースの価格設定 | 「残債が消える金額」はあくまで売主の都合であり、市場価値とは無関係であることを理解しているか。 |
| 利回りの競争力 | 周辺の売り出し物件と比較して、表面利回りが著しく低くなっていないか。 |
| ポータルサイトの掲載順位 | 価格が高すぎて検索条件のフィルタリング(例:2,000万円以下など)から漏れていないか。 |
依頼している不動産会社の販売力不足や囲い込みの問題
価格が適正であるにもかかわらず内見が入らない場合、依頼している不動産会社に問題がある可能性が高いです。特に注意すべきは「囲い込み」という悪質な慣習です。
囲い込みとは、不動産会社が売主と買主の両方から仲介手数料を得る(両手仲介)ために、他社からの購入申し込みや内見依頼を意図的に断る行為のことです。これにより、物件が広く市場に公開されず、販売機会を著しく損失します。
また、そもそも投資用物件の扱いに不慣れな会社に依頼しているケースもあります。実需(マイホーム)向けの販売が得意な会社と、投資用物件の販売が得意な会社は、保有している顧客リストも営業手法も全く異なります。投資家にリーチできていない会社に任せていては、いつまで経っても売れません。
サブリース契約や賃借人の属性がネックになっている場合
投資用マンション特有の問題として、「サブリース契約(家賃保証)」が解除できない、あるいは解除に高額な違約金が発生するというケースがあります。サブリース契約が付いたままの物件は、新しいオーナーにとって家賃収入が相場より低くなることが多く、投資妙味が薄れるため敬遠されがちです。さらに、金融機関によってはサブリース付き物件への融資を厳しく制限しているところもあり、買い手がローンを組めずに破談になることもあります。
また、現在入居している賃借人の属性(家賃滞納歴がある、トラブルメーカーであるなど)が悪い場合や、極端に低い賃料で長期間入居している場合も、売却の足かせとなります。これを「オーナーチェンジ物件のリスク」として買い手側が警戒するためです。
投資用マンションが売れない期間が続くとどうなる?リスクを知ってどうするか判断する

「今は売れないから、とりあえず持ち続けて時期を待とう」という判断は、不動産投資において非常に危険な賭けになることがあります。ここでは、売れない状態を放置した場合に発生しうる具体的なリスクについて解説します。
デッドクロスによる黒字倒産のリスクとキャッシュフロー悪化
不動産投資には「デッドクロス」という恐ろしい現象が存在します。これは、「ローンの元金返済額」が「減価償却費」を上回る状態を指します。
減価償却費は、実際には現金の支出がない経費ですが、築年数が経過すると計上できる金額が減っていきます。一方で、元利均等返済の場合、返済が進むにつれて利息部分が減り、元金返済部分が増えていきます。この結果、帳簿上は黒字(利益が出ている)で税金が発生するにもかかわらず、手元の現金(キャッシュフロー)はマイナスになるという「黒字倒産」状態に陥るリスクが高まります。
特に築15年〜20年を超えたあたりからこの現象が顕著になり、売ろうにも売れず、持っているだけで現金を失い続ける負のスパイラルに突入します。
修繕積立金の値上げや大規模修繕による追加負担
マンションの修繕積立金は、新築当初は低く設定されていますが、5年、10年といった節目で段階的に値上げされる計画が一般的です。築年数が古くなればなるほど、維持管理コストは増大します。
家賃収入は築年数とともに下落傾向にある中で、管理費・修繕積立金だけが上昇すれば、当然ながら毎月の収支は悪化します。さらに、積立金不足による一時金の徴収が発生すれば、数百万円単位の持ち出しが必要になるケースさえあります。このような将来コストが見えている物件は、当然ながら買い手からも敬遠されるため、時間が経てば経つほど「売れない」状況は深刻化します。
物件価値の下落とローン残債の逆転現象(オーバーローン)
不動産の価格は市況に左右されますが、建物自体の価値は経年劣化により確実に下がります。もし、今の時点で「売却価格 < ローン残債」のオーバーローン状態であるならば、時間が経過してもその差額(持ち出し金額)が縮まるとは限りません。
むしろ、物件価格の下落スピードがローンの元金返済スピードを上回れば、売却時に必要な手出し資金(自己資金)はどんどん増えていきます。「いつか相場が上がるかも」という淡い期待を持っている間に、売却に必要な「損切り費用」が膨れ上がり、身動きが取れなくなるのが最悪のシナリオです。
投資用マンションがどうしても売れない時にどうする?FPが提案する5つの対策

原因とリスクを理解した上で、具体的にどのようなアクションを起こすべきか。FPの視点から、有効な5つの対策を提案します。現在の状況に合わせて最適な手段を選択してください。
一般媒介契約への切り替えと複数社への依頼で競争を生む
現在、特定の1社だけに依頼する「専任媒介契約」や「専属専任媒介契約」を結んでいて成果が出ていない場合は、「一般媒介契約」への切り替えを強く推奨します。
一般媒介契約では、複数の不動産会社に同時に売却活動を依頼することができます。これにより、不動産会社間で「早く買い手を見つけないと他社に成約を持っていかれる」という競争原理が働きます。また、先述した「囲い込み」を物理的に防ぐことができるため、物件情報が広く市場に出回るようになります。
投資用物件は、実需物件と異なり、レインズだけでなく投資家向けの独自ルートでの紹介が重要です。それぞれの会社が抱える顧客リストにアプローチしてもらうことで、成約の可能性を高めることができます。
| 項目 | 専任・専属専任媒介 | 一般媒介 |
|---|---|---|
| 依頼できる会社数 | 1社のみ | 複数社OK |
| レインズ登録義務 | あり | なし(※任意) |
| 囲い込みリスク | 高い | 低い |
| 投資用物件との相性 | 担当者の能力に依存 | 競争原理が働き有利 |
「買取」を利用して即時現金化を目指すメリットとデメリット
仲介で一般の個人投資家を探すのではなく、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」という方法があります。
メリット:
最大のメリットは「スピード」と「確実性」です。最短数日で現金化が可能であり、仲介手数料も発生しません(直接取引の場合)。また、瑕疵担保責任(契約不適合責任)が免責されることが多く、売却後のトラブルリスクも低減できます。
デメリット:
買取価格は市場相場の7割〜8割程度になることが一般的です。不動産会社は買い取った後にリフォーム等を行い再販して利益を出す必要があるためです。ローン残債が多い場合、買取価格では残債を完済できず、差額を現金で用意しなければならない可能性が高くなります。
任意売却という選択肢(ローン返済が困難な場合)
もし、すでにローンの支払いが厳しく、滞納してしまいそうな状況であれば、「任意売却」を検討する必要があります。これは、金融機関(債権者)の合意を得て、ローン残債が残る状態でも抵当権を解除してもらい、物件を売却する方法です。
競売にかかると市場価格の5〜6割程度で叩き売られ、残債も多く残ってしまいますが、任意売却であれば市場価格に近い金額で売却できる可能性があります。ただし、これを行うと信用情報機関に記録が残る(いわゆるブラックリスト)可能性があるため、あくまで最終手段の一つとして、専門家と相談しながら進める必要があります。
損切り(赤字売却)を決断すべきタイミングと資金準備
投資の世界には「損切り(ロスカット)」という重要な概念があります。これは、これ以上の損失拡大を防ぐために、あえて損失を確定させる行為です。
「200万円の手出し金を払ってでも、今すぐ売却する」ことが、将来的に「毎月の赤字垂れ流し+将来の売却損拡大で計500万円の損失」を防ぐことになるならば、それは合理的な経済活動です。「高く売りたい」という願望を捨て、「いかに傷を浅くして撤退するか」にシフトチェンジする勇気も必要です。
この場合、不足する資金(ローン残債と売却額の差額+諸経費)をどう調達するかが課題となります。貯蓄を取り崩すか、親族からの借入、あるいは無担保ローン(フリーローン等)を活用して完済資金を用意する準備を進めましょう。
金利交渉や借り換えによるキャッシュフロー改善での持久戦
どうしても今は売却で多額の持ち出しが出せない、という場合は、銀行交渉による「延命措置」を検討します。具体的には、金利の引き下げ交渉や、借入期間の延長、あるいはより低金利な金融機関への借り換えです。
毎月の返済額を減らすことで、月々の収支(キャッシュフロー)をプラス、あるいはトントンに戻せれば、時間を稼ぐことができます。残債が減るのを待ちつつ、市況が好転するタイミングを伺う「持久戦」に持ち込む戦略です。ただし、これは根本的な解決ではなく、あくまで時間稼ぎである点を忘れてはいけません。
売れない投資用マンションを損切りする際に「どうする」と悩まないための思考法

対策は頭で理解していても、数百万円の損失を確定させる決断は精神的に非常に辛いものです。しかし、FPとして多くの投資家を見てきた経験から言えば、早期に損切りできた人ほど、その後の人生設計の立て直しが早いです。ここでは、決断を後押しするための思考法をお伝えします。
サンクコスト効果(埋没費用)の呪縛から逃れる
「これまで支払った頭金やローンの利息を取り戻したい」と考えるのは、行動経済学で言う「サンクコスト(埋没費用)効果」による心理的な罠です。過去に支払ったお金は、将来どのような意思決定をしても戻ってきません。
重要なのは「これからいくら失うか」を防ぐことです。過去の出費に縛られて未来の資産を食いつぶすことのないよう、現在の市場価値と将来のリスクだけを見て判断してください。
「持ち続ける損失」と「売却する損失」をシミュレーション比較
感情で判断せず、具体的な数字で比較しましょう。以下の2パターンをシミュレーションします。
- 今すぐ損切りして売却する場合:
手出し金(例:200万円)で損失確定。その後はローンの支払いも固定資産税もゼロ。精神的なストレスからも解放される。 - 5年間持ち続けて売却する場合:
毎月の赤字×60ヶ月分 + 固定資産税×5年分 + 修繕積立金値上げ分 + 5年後の物件価格下落分。
→ これらを合計すると、今の200万円以上の損失になる可能性はないか?
多くの場合、持ち続けるコストの方が高くつく結果となります。この数字を目の当たりにすれば、「どうする?」という迷いは消えるはずです。
投資用不動産の譲渡損失は損益通算できない点に注意
最後に税制上の注意点を解説します。マイホーム(居住用財産)の売却で損失が出た場合は、給与所得などと損益通算して税金を還付してもらえる特例があります。
しかし、投資用不動産の売却による損失(譲渡損失)は、給与所得や事業所得との損益通算ができません。 また、翌年以降への繰越控除も認められていません。これは、国税庁のタックスアンサー No.3203などでも明記されているルールです。(※同年の他の不動産譲渡益との通算は可能です)
つまり、「赤字で売れば税金が戻ってくるから」という甘い期待は持てないということです。税制優遇が受けられないからこそ、傷が浅いうちの早期売却がより一層重要になります。
投資用マンションが売れない状況でどうするか迷ったら専門FPへ相談を
ここまで解説してきた通り、売れない投資用マンションをどうするかという問題は、単なる不動産売買の話にとどまらず、家計全体のバランスシート、税金、そして今後のライフプランに直結する深刻な課題です。
不動産会社の営業マンは「売ること」のプロですが、あなたの「家計」や「人生」を守るプロではありません。彼らにとっては、あなたが損をしようが得をしようが、成約して手数料が入ればビジネスとして成立してしまいます。
だからこそ、利害関係のない第三者であり、不動産とお金の両方に精通した「不動産専門FP」のアドバイスが必要です。
「今の物件を本当に損切りすべきか?」
「借り換えでキャッシュフローは改善できるか?」
「具体的な売却価格の妥当性は?」
こうした個別の疑問に対して、客観的な数値シミュレーションを用いて回答できるのはFPだけです。
まとめ:投資用マンションが売れない悩みは早期の損切りと戦略的売却で解決する

投資用マンションが売れないという状況は、時間とともにリスクが拡大する緊急事態です。しかし、原因を冷静に分析し、適切な対策を講じれば、必ず出口は見つかります。
- 原因特定:価格乖離、営業力不足、物件固有の問題のどれかを特定する。
- 対策実行:一般媒介への切り替えで競争を生む、あるいは買取で即時撤退する。
- 思考転換:サンクコストを無視し、将来の損失回避を最優先に損切りを決断する。
- 税務理解:投資用物件の売却損は給与と損益通算できないことを理解する。
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