【不動産FPが解説】サブリース物件を売却するための全手順と損をしないための戦略

「サブリース契約がついているから、自分の物件なのに自由に売却できない……」 「家賃保証があるはずなのに、手元に残る現金がマイナスで将来が不安」 このような悩みを抱えている投資家の方は、決して少なくありません。特に20代から40代の会社員や公務員の方々にとって、老後の備えや資産形成のために始めたワンルームマンション投資が、サブリースという「出口の見えない契約」によって足かせになっているケースが目立ちます。
サブリース(一括借り上げ)は、一見すると空室リスクを回避できる素晴らしい仕組みに思えます。しかし、いざ物件を手放そうと考えたとき、この契約が売却価格を大きく押し下げ、買い手を見つけにくくする最大の障壁となります。本記事では、不動産専門のFPとしての視点から、サブリース物件を売却するための現実的なスキームと、損失を最小限に抑えるための戦術を1万字を超える圧倒的なボリュームで徹底解説します。
この記事を読むと分かること
- サブリース付き物件が市場で嫌厭される論理的な理由と売却価格への影響
- 借地借家法に基づいたサブリース解除の難易度と「正当事由」の作り方
- サブリースを解除せずに売却する場合と、解除してから売却する場合の収支シミュレーション
- 売却時に発生する税金(譲渡所得税)と、投資用不動産特有の税務上の注意点
- 悪徳業者に騙されないための、信頼できる不動産専門FPの見極め方
サブリース契約のある投資用物件を売却する前に知っておくべき「正当事由」の壁

サブリース物件を売却しようとする際、まず最初にぶつかるのが「借地借家法」という強固な法律の壁です。多くのオーナーは「自分の持ち物なのだから、いつでも契約を解約して売却できる」と考えていますが、現実はそう甘くありません。サブリース契約において、オーナーは「貸主」、サブリース会社は「借主」という立場になります。このとき、借主(業者)は借地借家法によって強力に守られているのです。
借主が強すぎる日本の借地借家法と売却への影響
日本の法律では、住宅に住む権利を保護するために、借主の権利が極めて強く設定されています。サブリース会社は実際に住んでいるわけではありませんが、法律上は「借主」として扱われます。そのため、オーナー側から契約を解約するためには、「正当な理由(正当事由)」が必要となります。
「物件を売却したいから」という理由は、裁判例では一般的に正当事由として認められにくい傾向にあります。業者はこの法律を盾に、「解約するなら立ち退き料を支払ってください」あるいは「解約には応じられません」と突っぱねてくるのが通例です。この膠着状態が、物件の売却を困難にする第一の要因です。
「解約予告期間」と「違約金」の落とし穴
契約書を読み返すと、「解約には6ヶ月前の通知が必要」といった文言があるはずです。しかし、これに従えば必ず解約できるわけではありません。前述の正当事由がなければ、通知を出しても業者が拒否すればそれまでです。
また、解約にあたって「賃料の6ヶ月分〜12ヶ月分」といった高額な違約金を請求されるケースも多々あります。売却で利益が出るならまだしも、赤字状態での売却(損切り)を検討しているオーナーにとって、この違約金は非常に重い負担となります。
実需層に売れないことが物件価格を下げる
サブリースがついている物件は、基本的に「投資家」にしか売れません。なぜなら、サブリースを解除できない限り、「自分が住むための住宅(実需)」として購入することができないからです。住宅ローンを利用して自分で住もうと考えている層をターゲットから外してしまうことは、売却ターゲットを大幅に狭めることを意味します。
投資家は収益性を重視するため、利回りが低ければ買いません。一方で、実需層は「住み心地」や「利便性」で買うため、投資用価格よりも高く買ってくれる傾向があります。サブリースという縛りがあるだけで、この「高値で買ってくれる実需層」を最初から放棄しなければならないのです。
サブリース契約中物件の売却価格が低くなる理由と評価額の仕組み

なぜサブリース物件の売却価格は、通常の物件に比べて安くなってしまうのでしょうか。それは、不動産鑑定や銀行融資における評価方法に理由があります。投資用不動産の価値は、主に「収益還元法」によって算出されます。
収益還元法による査定がもたらす致命的な差
収益還元法とは、「その物件が将来生み出す利益」をベースに価格を決める手法です。サブリース物件の場合、計算の基礎となる賃料は、オーナーに振り込まれる「保証賃料」となります。
通常、サブリース会社は市場家賃から10%〜20%程度の手数料を差し引いてオーナーに送金します。
| 項目 | 通常管理(手数料5%) | サブリース(手数料15%) |
|---|---|---|
| 市場家賃 | 100,000円 | 100,000円 |
| オーナー受取額 | 95,000円 | 85,000円 |
| 年間賃料収入 | 1,140,000円 | 1,020,000円 |
| 還元利回り5%での評価額 | 2,280万円 | 2,040万円 |
上記のように、全く同じスペックの物件でも、サブリースという契約形態であるだけで、評価額が200万円以上も下落する可能性があるのです。買い手となる投資家からすれば、入ってくる現金が少ない物件を高く買う理由はありません。
修繕積立金の上昇とサブリースの二重苦
多くの投資用ワンルームマンションでは、築年数が経過するごとに修繕積立金が上昇します。一方で、サブリース賃料は数年ごとの改定で「減額」されるリスクが常にあります。
収入が減り、固定費が増える状況では、物件が生み出す純利益(NOI)は圧縮されます。売却を検討する段階で、このキャッシュフローが悪化していると、収益還元法による査定額はさらに厳しくなります。不動産専門のFPとして多くの相談を受けてきましたが、「毎月の収支が数万円の赤字」という状態で売却を余儀なくされるケースの多くは、この収益構造の悪化が原因です。
金融機関の融資評価が厳しくなる背景
物件を購入する買い手が銀行融資を利用する場合、銀行もサブリース契約を厳しくチェックします。一部の銀行では、サブリース賃料が市場価格と乖離している場合、より保守的な(低い)家賃で評価を行います。
また、サブリース会社が倒産するリスクや、契約解除に伴うトラブルリスクを考慮し、融資額を減額(減額査定)することもあります。買い手が融資を受けにくい物件は、結果として「現金購入者」や「高属性の投資家」に限定されるため、さらに売却価格を下げざるを得ないという悪循環に陥ります。
投資用サブリース物件を早期売却すべきケースと保有を続けるリスク

「今は赤字だけど、いつか価格が上がるかも」「完済すれば私的年金になる」という言葉を信じて保有を続けるべきでしょうか。不動産専門のFPとしては、以下の条件に当てはまる場合は、早急な売却の検討を推奨します。
逆ザヤ状態が続き、手出しが発生している場合
毎月のローン返済額や管理費、修繕積立金の合計が、サブリース賃料を上回っている「逆ザヤ」の状態は非常に危険です。
「節税になるから大丈夫」という営業トークを鵜呑みにしてはいけません。不動産所得の赤字による所得税の還付額よりも、毎月のキャッシュアウトの方が大きい場合、それは資産運用ではなく「資産の切り崩し」です。特に、将来的に結婚や住宅購入を控えている20代・30代の方にとって、この毎月の赤字は住宅ローンの審査にも悪影響を及ぼす可能性があります。
賃料改定通知が届き、さらなる減額が予想される場合
サブリース契約の多くは、2年ごとに賃料の見直しが行われます。「30年間一括借り上げ」と謳っていても、「賃料は不変」ではありません。
築年数が10年、15年と経過すると、物件の競争力は低下します。サブリース会社は利益を確保するために、容赦なく賃料減額を要求してきます。これに応じない場合、契約解除を突きつけられることもあります(皮肉なことに、業者が得をしない状況では、彼らの方から解約を申し出てくるのです)。
一度賃料が下がれば、それは将来の売却価格の下落に直結します。「これ以上下がる前に売る」という判断は、投資におけるリスク管理の基本です。
物件の立地条件が将来的に不安な場合
地方都市や、都内でも駅から徒歩15分以上離れているような物件でサブリースを利用している場合は要注意です。サブリース会社が強気でいられるのは、その物件に「再リース(転貸)」できる自信があるからです。
人口減少が進むエリアでは、空室期間が長引くと、サブリース会社にとってその物件は「お荷物」になります。彼らが撤退(解約)を申し出たとき、あなたは自分で客付けをしなければなりませんが、立地が悪い物件の賃貸管理は困難を極めます。「出口戦略が描けない物件」をサブリースというベールで隠して持っている状態は、爆弾を抱えているのと同義です。
サブリース付き物件の売却を拒否されないための交渉術と解約のポイント

サブリース物件を少しでも高く売るためには、やはり「サブリースを解除して、通常のオーナーチェンジ物件として、あるいは空室にして実需向けとして売る」のが王道です。しかし、前述の通り業者との交渉は難航します。ここでは、不動産専門のFPが教える具体的な交渉術を伝授します。
「売却」を理由にせず「自己居住」や「親族利用」を検討する
単に「高く売りたいから解約したい」と言っても、業者は首を縦に振りません。法的に正当事由として認められやすいのは、「オーナー自身が住む必要が生じた」「親族が住むことになった」という切実な居住ニーズです。
もちろん、嘘をついて解約するのはリスクがありますが、実際にライフスタイルが変わり、そのマンションに住む選択肢があるのならば、それを理由に交渉を進めるのは正当な権利です。
立ち退き料(解決金)の提示による早期解決
法的な正当事由を補完するのが「金銭的補償(立ち退き料)」です。サブリース会社にとって、その物件からの収益(手数料)を失う代わりに、まとまった現金が入ってくるのであれば、交渉に応じる余地が生まれます。
目安としては、「賃料の3ヶ月〜6ヶ月分」程度を提示し、着地点を探ります。高く感じるかもしれませんが、サブリースを外すことで売却価格が200万円アップするのであれば、50万円の立ち退き料を払っても十分にお釣りが出ます。
管理会社の変更とセットで交渉する
サブリースを解約する際、「今後は御社に通常の賃貸管理(集金代行)をお願いしたい」と持ちかけるのも一つの手です。業者側からすれば、サブリースの利益は減りますが、管理手数料という形で継続的な収益が見込めるため、全面拒否されるリスクを下げられます。
ただし、この場合は「サブリースなしのオーナーチェンジ物件」としての売却になります。実需向け(自分で住む人向け)には売れませんが、投資家向けとしては利回りが改善するため、売却価格の向上に寄与します。
サブリースを解除せずに物件を売却するメリット・デメリットの徹底比較

どうしても解除ができない場合、あるいは解除の手間やコストをかけたくない場合、サブリースを付けたまま売却するという選択肢もあります。これを「サブリース権承継」による売却と呼びます。
サブリース付き売却のメリット
最大のメリットは、「現状維持で即座に売りに出せる」ことです。解除交渉には数ヶ月から、最悪の場合は裁判沙汰になり1年以上かかることもあります。サブリース付きであれば、今の状態のまま買い手を探すことができます。
また、買い手が「自分も管理の手間をかけたくない」「空室リスクがとにかく怖い」という初心者投資家であれば、サブリースがついていることが逆に安心材料(セールスポイント)になるケースも稀にあります。
サブリース付き売却のデメリット
デメリットは、これまで述べてきた通り「価格の安さ」と「買い手の少なさ」です。
| 比較項目 | サブリース解除して売却 | サブリース付きで売却 |
|---|---|---|
| 売却ターゲット | 実需層 + 投資家(幅広い) | 投資家のみ(限定的) |
| 売却価格 | 相場価格(高め) | 収益還元価格(低め) |
| 成約までの期間 | 解除交渉に時間がかかる | 買い手が見つかれば早い |
| 手元に残る現金 | 最大化しやすい | 目減りしやすい |
不動産専門のFPとしては、基本的には「解除」を目指すべきだと考えます。しかし、ローンの残債が少なく、早く手放して次の投資やライフイベントに備えたいという場合は、価格を妥協してでもそのまま売るという判断もあり得ます。
サブリース付き物件を高く買ってくれる「専門業者」の存在
一般の市場(レインズ等)ではなかなか買い手がつかないサブリース物件でも、専門の「買取業者」であれば買い取ってくれることがあります。彼らはサブリース会社との交渉ノウハウを持っており、買い取った後に自分たちで解除を成功させ、再販することで利益を出します。
仲介手数料がかからない、契約不適合責任が免除されるといったメリットもありますが、買取価格は市場価格の7割〜8割程度になることが多いです。「とにかく早く、確実に、トラブルなく終わらせたい」という方には向いています。
最適なサブリース物件の売却先を選ぶための基準と不動産専門のFPへの相談

サブリース物件の売却は、通常の不動産売却以上に「誰に頼むか」が成否を分けます。一般的な不動産仲介会社の中には、サブリース契約の複雑さを嫌がり、適切なアドバイスをくれない担当者も少なくありません。
仲介会社選びでチェックすべきポイント
まずは、その会社が「投資用マンションの売却実績」、特に「サブリース解除の交渉経験」をどれだけ持っているかを確認してください。
- 過去にどのようなロジックでサブリースを解除させたか?
- その際の立ち退き料の相場はいくらだったか?
- 解除せずに売った場合と、解除した場合の査定額を両方提示してくれるか?
これらの質問に対して、明確かつ論理的に答えられない会社は避けるべきです。
税金面での注意:譲渡損失の損益通算について
ここで非常に重要な税務上の注意点をお伝えします。投資用不動産を売却して損失が出た場合(譲渡損失)、その損失を給与所得など他の所得と合算して税金を安くする「損益通算」は、現在の税制では認められていません。
かつては節税スキームとして利用されていましたが、法改正により封じられました。つまり、「売って損が出ても、確定申告で税金が戻ってくるから大丈夫」という理屈は通用しません。売却損は、同じ年の他の不動産譲渡益としか相殺できず、翌年以降への繰越控除も原則不可能です。
詳細は国税庁の「土地建物を売却したとき」のページで確認できますが、この事実を知らずに売却を進めると、キャッシュフローの計算が大きく狂うことになります。
サブリース付きの投資用物件を売却する際、信頼できる専門家が必要な理由
ここまでお読みいただければ分かる通り、サブリース物件の売却は「法律」「金融」「税務」「交渉」という4つの高度な要素が絡み合っています。不動産業者は「売りたい」というバイアスがかかっていますし、弁護士は「法的解決」には強いですが「資産運用全体」の視点は持ち合わせていません。
そこで、不動産専門のFPの出番です。FPはあなたのライフプラン全体(結婚、子育て、住宅ローン、老後資金)を俯瞰した上で、その物件を持ち続けるべきか、いくらなら売るべきか、売却後の税金はどうなるか、といった問題をトータルでシミュレーションします。
特に、サブリース会社の言いなりになって不利な条件で売却したり、逆に無理な解除交渉で泥沼化したりするのを防ぐ「防波堤」としての役割を果たします。あなたの人生にとって、その物件をどう扱うのが最適解なのか、中立的な立場からアドバイスを受けることが、結果として最大の利益(あるいは最小の損失)に繋がります。
まとめ:サブリース物件の売却を成功させるために踏むべきステップ

サブリース物件の売却は、確かに簡単ではありません。借地借家法の壁、収益還元法による査定の低さ、そして税務上の制約など、多くのハードルが存在します。しかし、「放置すること」が最大のリスクであることも事実です。
築年数が進み、大規模修繕を控え、さらに賃料が下げられる前に、まずは自分の物件の「真の価値」を知ることから始めてください。サブリースという鎖を断ち切り、健全な資産形成の道に戻るためには、専門的な知見に基づいた正しい戦略が必要です。
もしあなたが、今のサブリース契約に不安を感じ、将来のキャッシュフローに危機感を抱いているのであれば、一人で悩まずにぜひご相談ください。不動産専門のFPとして、あなたの状況に合わせた最適な出口戦略を共に描き、納得のいく解決へと導きます。
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